大型トラックで運ぶコンテナ輸送には、港湾と内陸を結ぶ陸上輸送「ドレージ」が不可欠です。ドレージを行うことで、「受け渡し条件の未確定」「返却タイミングのズレ」「情報不足による差し戻し」などの要因で頻発する遅延や手配ミスを防止しやすくなります。
本記事では、ドレージの定義や種類、物流チェーン全体における役割、そして輸送の要となるトラクタとシャーシの構造について解説します。全体像を正しく把握することは、手配ミスを防ぎ、安全でスムーズな運用を実現するための近道です。
大型トラックによるコンテナ陸送は、港湾や鉄道ターミナル、内陸デポ間を結ぶ輸送を指し、一般的に「ドレージ(Drayage)」と呼ばれます。通常、港湾または鉄道ターミナルから50~100km圏内で行われる短距離輸送が中心であり、最も一般的なのは港湾と内陸を結ぶ「港湾ドレージ」ですが、鉄道ターミナルと内陸を結ぶ「鉄道ドレージ」も重要な役割を担っています。
コンテナ輸送におけるドレージの位置づけ
コンテナ輸送は海上区間だけで完結するものではなく、港湾と内陸側の物流拠点を結ぶドレージがあって初めて成立します。ドレージは、港のコンテナヤード(CY)から倉庫・工場・鉄道ターミナル(ICDなど)へ、あるいはその逆方向へとコンテナを運ぶ港湾起点の短距離輸送であり、海上輸送と内陸輸送を接続する「つなぎ目」の工程です。
輸送距離こそ比較的短いものの、本船の入出港スケジュール、ヤードの混雑、通関・ゲート処理、シャーシ手配やドライバー稼働など複数の制約条件の影響を受けやすく、遅延が発生すると幹線輸送や倉庫オペレーション、納品計画といった後工程へ波及しやすいのが特徴です。つまりドレージは、単なる前後輸送ではなく、物流チェーン全体の流れを左右する重要な工程として位置づけられます。
1. 海上輸送(幹線):コンテナ船による長距離輸送
2. 港湾荷役:港に到着したコンテナの積み下ろしとヤード内での一時保管
3. ドレージ(陸送): 大型トラックによる、港と内陸の倉庫・工場間のコンテナ輸送
ドレージにおいては、トラックが貨物を運ぶ区間(実入り輸送)だけでなく、荷下ろし後に発生する「空コンテナの返却地点」までを明確に把握しておくことが、スムーズな運行とコスト管理のポイントとなります。
ドレージの基本となるトラクタとシャーシの役割

ドレージを効率的に管理するためには、使用する車両の構造を正しく理解することが不可欠です。一般的な車体一体型のトラックとは異なり、コンテナ輸送は「引っ張る車(トラクタ)」と「コンテナを載せる台車(シャーシ)」が分離する構造となっており、この仕組みを把握することがコスト管理や運用効率化の第一歩となります。
ここでは、トラクタとシャーシの具体的な役割や、荷台トラックとの違い、コンテナサイズによる制約、実入りと空コンテナの扱いについて詳しく解説します。
荷台トラックとの違い
大型トラックのコンテナ輸送が一般的なトラック輸送と最も異なる点は、車両がトラクタとシャーシに分離していることです。
トラクタは自走機能を持つ牽引車であり、走行および制動の主体となります。一方でシャーシはコンテナを載せて固定するための専用の台車です。車体一体型のトラックと異なり、コンテナ輸送ではコンテナの「受け渡し条件」や「返却条件」という工程が組み込まれる点が大きな特徴です。また、荷役中にトラクタがシャーシを切り離して別の仕事へ向かう「台車切り離し」などの柔軟な運用も可能となります。
「シャーシに載せるコンテナの基礎知識
コンテナ輸送はシャーシにコンテナを積載して行いますが、コンテナのサイズによって、必要となるシャーシや道路の取り回し条件は大きく変わります。
一般的なコンテナサイズには20ft、40ft、そして高さのあるハイキューブ(HC)の3種類があります。
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| 全長が長く、市街地を走行する場合には交差点などでの転回可否の確認が必要 |
| 全高が高く、トンネルや高架、倉庫の入り口などの「全高」制限に注意 |
実入りコンテナと空コンテナの違い
コンテナの中に貨物が入っている「実入り」と、空の状態の「空コン」では、運行上の注意点が異なります。
・実入りコンテナ:重量が大きいため、制動距離が伸び、カーブでの取り回しにも注意が必要
・空コンテナ:非常に軽いため、走行中の横風などで挙動が不安定になりやすい特性がある
これらの違いは運行計画や安全確保だけでなく、「空コンの返却」というドレージ特有の工程にも直結するため、明確に区別して管理する必要があります。
ドレージの手配前に確定すべき「5点セット」
ドレージの手配を円滑に進めるためには、事前の情報整理が不可欠です。情報が未確定のまま手配を進めてしまうと、現場での差し戻しや待機時間の発生、さらには追加費用の請求といったトラブルにつながりかねません。ドレージ業者が配車を行うために最低限必要な、以下の「5点セット」を事前に確定させましょう。
・コンテナの引取場所(港名・ターミナル名・所在地)と返却先(空コン返却場所・期限・受付時間)
未確定の情報がある状態では、ドレージ業者は配車を決定することができません。併せて、輸送中の安全を担保する「シールの保全」や、返却延滞時に発生する「ディテンション(返却延滞料)」などの追加料金リスクについても事前に把握しておくことが、トラブル防止に不可欠です。
大型トラックのドレージにおけるルール
大型トラックによるドレージは、その巨大なサイズと重量ゆえに、一般的な貨物車両以上に厳しい運行制約を受けます。安全かつ法規を遵守した運行を実現するためには、物理的な寸法制限や重量制限、さらには貨物の特性に応じた特殊な管理条件を事前に把握しておく必要があります。
ここでは、道路インフラにもとづくルート制約と、特殊貨物における管理上の注意点について詳しく解説します。
ルート制限
ドレージにおいては、車両の大きさと重さが走行ルートを決定する最大の要因となります。国・地域ごとで設けられているルート制限は、主に下記のとおりです。
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| | 高さ4.0m/幅2.55m/長さ16.5m(セミトレーラー) | 概ね高さ4.1m/幅2.6m程度(州ごとで差がある) |
| 総重量20t(高速・指定道路25t)以内/軸重10t以内 | | 原則80,000ポンド-約36t(州ごとで異なる) |
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トンネルや高架下では個別の高さ制限があり、ハイキューブ(HC)コンテナ積載時は特に注意が必要。
許可取得時には、走行ルート・時間帯・速度が指定されます。これらの制約を無視すると事故や違反に直結するため、事前のルート調査を行い、通行不可の場合の代替案を準備しておくことが重要です。
危険物、温度管理、セキュリティに関するルール
大型トラックでのドレージにおいては、貨物の特性に応じて国内法のみならず、国際的な規則への適合や特殊な設備の運用が求められます。
例えば、危険物を輸送する際には、消防法や道路運送車両法、毒物及び劇物取締法などにもとづき、適切な書類の備え付けや車両への標識表示、さらには通行可能なルートの制限を厳守しなければなりません。
また、冷凍・冷蔵貨物を扱うリーファーコンテナの場合は、輸送中も常に電源を確保し、継続的な温度管理や事前の予冷確認といった徹底した品質管理が不可欠となります。さらに、精密機器やブランド品といった高価値貨物においては、GPSによる追跡や同乗警備、専用の保険付保といった高度なセキュリティ対策が求められます。
これらの特殊な条件確認が遅れると、当日になって機材の不足や専門スタッフの不在により対応ができず、最悪の場合、輸送そのものがストップしてしまう重大なリスクを招きます。そのため、手配の初期段階で詳細な貨物情報を共有し、条件を確定させておくことが、スムーズな運行を実現するための条件となります。
各国におけるドレージの取り組みの実例
ドレージの課題やそれに対する取り組みは、各国の地理的条件や物流インフラによって多岐にわたります。ここでは、アメリカ、オランダ、中国、そして日本の4つの事例を挙げながら、それぞれの地域がどのように輸送の効率化や課題解決を図っているのか、最新の動向を整理します。
アメリカ:ロサンゼルス 港・ロングビーチ 港の混雑問題と対策
アメリカでは2020年から2021年にかけて、ロサンゼルス(LA)港およびロングビーチ(LB)港において深刻な港湾の混雑が発生し、100隻以上の船が沖合で待機を強いられる事態になりました。この混雑の主な原因は、急激なコンテナ需要の増加に対し、ドレージドライバーやシャーシが不足したことにあります。これを受け、現地では24時間のゲート運営(夜間営業)の導入や、滞留コンテナへの罰金制度の施行といった対策が講じられました。また、アポイントメントシステムの厳格化も進んでおり、ピーク時における事前予約や代替ルート確保の重要性がこれまで以上に高まっています。
オランダ:ロッテルダム港のインターモーダル連携
ヨーロッパ最大の港であるオランダのロッテルダム港では、鉄道引込線を港湾に直結させるなど、インターモーダル(複数の輸送手段の組み合わせ)連携が進んでいます。これにより、トラックから鉄道、そして再びトラックへとつなぐシームレスな接続体制が構築され、効率的なコンテナ移動が実現しました。この取り組みは、CO2排出量の削減とドライバー不足対策の両立を目的としています。複数の輸送手段を柔軟に組み合わせることで、物流網全体の柔軟性を向上させている先進的な事例といえるでしょう。
中国:中欧班列と陸路輸送の拡大
中国では、中国とヨーロッパを陸路で結ぶ鉄道コンテナ輸送「中欧班列」の利用が拡大しています。2011年の運行開始以来、2025年時点で累計運行本数は12万本を突破し、2016年から2023年の間に年間運行本数は約10倍に増加しました。この急成長に伴い、鉄道とトラックを組み合わせた「インターモーダル輸送」の重要性が高まっています。具体的には、鉄道ターミナルから最終配送先までの「ラストマイル」をトラックが担うドレージが拡充されており、日系企業も中欧班列を活用した一貫輸送を提供しています。
日本:2024年問題によりコストの増加
日本では、いわゆる「2024年問題」によるトラックドライバーの労働時間の制限が、ドレージの運用コストに大きな影響を及ぼしました。ドレージの手配が遅れることは、船会社に対するペナルティであるデマレージ(超過保管料)やディテンション(返却延滞料)の発生に直結します。さらに、荷主側の倉庫での荷下ろしが遅れた際に運送会社から請求される「待機料金」についても、2024年問題以降、より厳格化している現状があります。日本国内での運用においては、これまで以上に緻密なスケジュール管理と効率的な荷役作業が求められているのです。
まとめ|要点を押さえて失敗しないドレージを
大型トラックで運ぶドレージは、港と内陸をつなぐ工程であり、海上輸送の前後で必ず発生します。
ドレージの手配と運用を安定させるには、引取場所・納品先・コンテナ情報(サイズ・重量・番号)・返却条件・連絡体制の5点セットを先に確定し、受付条件や予約の要否まで事前に確認しておくことが重要です。
本記事で解説した基礎知識や各国の実例を参考に、情報の不備によるトラブルを未然に防ぎ、効率的で安全なドレージの運用を目指しましょう。